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2021年4-6月期世界経済見通し:万事順調

2021年3月25日

2021年は強気なムードで幕を開けた。当社のリサーチアナリストは年初時点で、世界経済が新型コロナウイルスのパンデミックによる打撃から回復し始めていることを踏まえ、リスク資産がアウトパフォームし、債券利回りは徐々に上昇すると予想した。3ヵ月が経過した今も、世界経済の回復基調は崩れていない。当社アナリストが足元のマクロ経済情勢をリサーチした結果、以下3つの主要テーマが浮かび上がった。

1. 米国を中心に明るい経済ニュースが目立つ

米国におけるコロナ対応の経済対策については、2020年末、トランプ前政権下で9,350億ドル規模の支援策が成立し、続くバイデン政権下でも先日、1.9兆ドル規模の支援策が成立した。この非常に強力な財政出動により、2021年4-6月期末までには米国経済はコロナ禍前の水準以上に持ち直すと見込まれる。つまり、文字通り「V字」回復である。中国もまた、個人消費、輸出、製造業の設備投資を追い風に、景気回復が進む可能性が極めて高い。この米中二大国が牽引する格好で、2021年の世界経済の成長率は+6.4%になると当社アナリストは予想している。これは少なくとも過去40年間で最も高い水準である。

世界経済成長への道のり:+6.4%

2021年、米中が世界経済の回復を牽引する見通し。特に、米国の大型経済対策と中国の堅調な個人消費が下支えとなろう。

新型コロナウイルスのパンデミックに関しては、状況が大きく改善している。欧米諸国では入院者数や新規感染者数が急減し、高リスク者のワクチン接種も大方完了した。米国と英国では2021年半ばまでに集団免疫を獲得し、その後数ヵ月で欧州も達成できる見通しとなっている。

2. 家計は極めて良好な状況

米国、英国、ユーロ圏の家計はコロナ禍で、GDPの8~10%にも相当する過剰貯蓄を増やした。これは、仮にパンデミックが発生しなかった場合に増えたであろう貯蓄額を上回るが、その一部は、給付金小切手や失業保険給付の形で実施された政府支援策によって生じた貯蓄である。通常、景気後退局面では家計が支出を抑制するため、予備的貯蓄は増加する傾向にあるが、コロナ禍での貯蓄は、幅広い国・地域で実施されたロックダウン(都市封鎖)に伴う、半ば「強制的」なものが大部分とみられる。

家計の過剰貯蓄:+8~10%

米国、英国、欧州の家計は、パンデミックによるロックダウン中に貯蓄を積み増し、中でも「平常時」には支出が多くなりがちな富裕層で顕著に増えた。

当社アナリストはまた、社会経済的に上位層に属する世帯に貯蓄が集中している点にも注目している。これらの世帯には支出のための資金があり、実際、積極的に消費を行う傾向にある。消費の回復ペースは、経済再開のタイミングに応じて各地域で異なるとみられるが、繰越需要は成長の大きな原動力になると期待される。

3. 景気過熱への懸念は行き過ぎ

極めて良好なマクロ経済見通しを背景に、一部の投資家の間で、急激なインフレへの警戒感が強まっている。インフレが急上昇した場合、米連邦準備制度理事会(FRB)が性急な引き締め政策を強いられる可能性もある。しかし、当社アナリストはこうした懸念を持っていない。2021年に入り、債券利回りは大幅に上昇したが、これは、中期的な期待インフレ率の急上昇というよりも、成長見通しの見直しを反映した部分が大きい。年央にはインフレ率が急騰する可能性があるが、その後年末までに落ち着くと当社アナリストはみている。これはFRBの予想ともほぼ一致する。

「懸念要因として、債券相場の下落とインフレの加速により、FRBが積極的な利上げサイクルを強いられ、リスク資産の急落を招くシナリオが指摘されているが、これらの懸念は行き過ぎだと当社は考える。」

 Ajay Rajadhyaksha, バークレイズ、マクロ・リサーチ責任者

もっとも、すべての金融資産が「買い」というわけではない点に注意すべきだと当社アナリストは指摘している。多くの市場でバリュエーションは適正水準に達しており、また新興国債券などの資産クラスは、成長性と利回りの綱引きに翻弄される場面が増えている。とは言え、年初からの3ヵ月間、当社アナリストの基本スタンスに変わりはない。世界経済の成長見通しについて強気な見方を維持し、リスク資産を債券に対してオーバーウェイトとしている。

 

※これはバークレイズのInvestment Bank サイトに掲載された英語の記事を日本語にした参考訳です。英語版が原文ですので、これら両言語版の間に齟齬がある場合は英語版が優先します。

英語版オリジナルの記事はこちら:Q2 2021 Global Outlook: All systems go

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