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2021年のヘッジファンド見通し:資金流入と資産配分は増加傾向

2021年2月24日

当社の戦略コンサルティング・チームは1年前のレポートで、ヘッジファンド投資の機運が醸成されつつあり、新たな投資機会を享受できる時代の幕開けだと述べた。当該レポートは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を受けて、株式市場が過去最大級の暴落に見舞われる前に発行したものだ。

もっとも、2020年を総括すれば、ヘッジファンドにとって好調な年となった。プラスのリターンを上げただけでなく、アップサイド・キャプチャー・レシオ(上昇相場で市場平均をどの程度上回ったかを表す指標)とアルファ(超過収益)も過去20年間で4番目に高い水準を記録した。また、ヘッジファンドの運用資産残高(AUM)は、10-12月期に過去最高となる3.6兆米ドルに達した。この増加は、ひとえに運用パフォーマンスによるものである。1-6月期には大規模な資金流出が発生し、7-12月期の流入によっても補い切れないほどだったからだ。

戦略コンサルティング・チームが実施した最新の投資家調査から、2021年はヘッジファンドにとって飛躍の年となり得ることが示唆された。純資金流入額は業界全体で100億~300億米ドル、グロス流入額は約4,500億米ドルに上る見通しである。

1. ヘッジファンドに対する投資家の関心は過去数年で最も高い

戦略コンサルティング・チームの調査は240の投資家を対象とし、資産ベースではヘッジファンド業界全体の20%以上をカバーする。調査の結果、すべてのタイプの投資家が、ヘッジファンドへの資産配分を増やす方針であることが明らかとなった。さらに、ヘッジファンドに対する投資家のセンチメントは、2014年以来で最も好意的となっている。

ヘッジファンドへの資金流入を促す要因は数多くあるが、特に投資家の「繰越需要」の大きさが注目される。2020年にヘッジファンド投資家は300億米ドルの資金を引き揚げ、ヘッジファンド業界全体からの純流出は3年連続となった。

現在、待機資金が潤沢な状態にあり、あらゆるタイプの投資家が今後(キャッシュ比率を引き下げ)投資比率を引き上げていく考えを示した。選好する投資対象については、プライベート・エクイティ/ベンチャー・キャピタルに次ぐ2位がヘッジファンドであり、投資家の41%がヘッジファンドへのエクスポージャーを増やす意向を明らかにしている。

2021年のヘッジファンドへの投資方針について、あらゆるタイプの投資家が純資産配分を予定しており、ファミリー・オフィス(個人資産の管理会社)とプライベート・バンクは最も強気の方針を示唆した。ヘッジファンドへの資金配分を決定付ける要因は投資家のタイプによって異なるが、その主な目的を大まかに分類すると、(1)ポートフォリオの分散化、(2)リスクの低減、(3)債券に近いリスクで株式と同等のリターンを稼得できる投資機会の確保、となる。

2021年に投資家はヘッジファンドへのエクスポージャーを拡大させる方針

2. ヘッジファンドは2020年に最終的に良好なパフォーマンスを上げたものの、一時は大幅なドローダウンも発生

2020年の株式相場を振り返ると、「下落も上昇も極端な一年」と総括でき、ヘッジファンドもこれを反映する動きとなった。1-3月期に、ヘッジファンドはダウンサイド ・キャプチャー・レシオ(下落相場で市場平均をどの程度下回ったかを表す指標)とアルファの両面で大苦戦を強いられ、コロナ危機のさなか、過去の下落局面以上のドローダウンに見舞われた。

ところが、相場の回復に伴い、ヘッジファンドのパフォーマンスも大幅に改善し、マイナス分を打ち消した。ヘッジファンドのアップサイド・キャプチャー・レシオは、過去4回の危機からの回復局面で平均42%であったのに対し、コロナ危機からの回復局面では同56%に達した。アルファについては、過去の危機からの回復局面で平均2.1%だったのに対し(ただし、2008年金融危機単独からの回復局面では6.3%)、コロナ危機の回復局面では平均9.9%となった。

さらに、ヘッジファンドは2020年1-3月期のマイナス・リターンを経て、4-12月期には平均+26.2%のリターンを上げ、ヘッジファンド・リサーチ(HFR)がヘッジファンドの追跡調査を開始した1991年以来で、3四半期としては過去最高のパフォーマンスを記録した。また、ヘッジファンド業界全体のAUMは10-12月期に過去最高の3.6兆米ドルとなった。この増加は、ひとえに運用パフォーマンスによるものである。

2020年:ヘッジファンドのパフォーマンスは両極端を経験

3. 投資家のアロケーション・プロセスはコロナ危機で一時混乱するも、その後軌道修正

投資家は2020年に発生したパンデミックを受けて、当初の計画よりもキャッシュの保有比率を引き上げた。コロナ危機時には、医療機関やヘルスケア施設を運営する投資家を筆頭に、一部の投資家にとってキャッシュの価値が高まった。

同時に、投資家のアロケーション・プロセスはパンデミックによって混乱が生じた。外出制限やソーシャル・ディスタンスが求められる状況下でオペレーションのデューデリジェンスを行うことは困難であることから、多くの投資家は、新たな運用会社を模索するのではなく、既存のヘッジファンドとの関係維持を選択した。

運用会社と直接対面で面談を行うことができない状況から、投資家の97%がオペレーションのデューデリジェンス方法を変更した。投資家の半数以上はその新たな方法をコロナ後も継続する方針である。既存のヘッジファンドとの関係に終始していた2020年を経て、多くの投資家が2021年にはグロス・ベースで4,500億米ドルの資金を配分すると予想され、新たなヘッジファンドとの関係構築に再び動き始めるとみられる。

 

※これはバークレイズのInvestment Bank サイトに掲載された英語の記事を日本語にした参考訳です。英語版が原文ですので、これら両言語版の間に齟齬がある場合は英語版が優先します。

英語版オリジナルの記事はこちら:Hedge Fund Outlook 2021: Inflows and allocations on the rise

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